コラム記事 #63
ご機嫌をとりすぎることの危険性 子どもの思うようにならない場面で、大人はどう対応する?
神戸イングリッシュアカデミー(KEA)では、皆さんの子育てが少しでも豊かになるよう、「子育てのちょっと困ったこと」について、共に考える機会を設けています。
当ブログでは、保護者様から実際にいただいた質問に、対処のコツや子どもの見方のコツを解説して参ります。毎日の子育てに是非お役立てください!
Ms.Carnell 以下(C)KEA 校長
Ms.Eto 以下(E) KEAプログラムコーディネーター
今日のテーマは、「子どもが思うようにならない場面で、どうしましょう?」です。
C)
今日は、子どもに「やってほしいこと」があるのに動いてくれない、そんな時の環境づくりについて扱っていきたいと思います。保護者の方には、もしかしたら、少し耳が痛いことかもしれません。子どもが思うようにならない場面で、どうしましょう?という内容です。
子どもの気持ちを大切にすることは重要なのですが、常に子どもの気持ち通りに動いていくことは難しいですよね。集団教育の場においては、どのような対応をしているかについてお伝えし、その上で、家庭ではどんな対応がよいのか、考えていきたいと思います。
E)
子どもは思い通りにならないと、全力で反抗してきますし、本当に皆さま、日々大変な思いをしていらっしゃることと思います。社会の目も加わると、子育て本にあるような理想論ではいかなくなってしまいますし…。例えば、
困ってしまいますよね。
私にも経験がありますので、「そんなにうまいこといかない!」という気持ちは十分にわかりつつ、それでも、子どもの言いなりになってしまうことには危険性が伴います。ですから、完璧でなくてもいい、しかし、ご自分の生活の中でできうることはどんなことなのか、そんなことを考える機会にしていただければと思います。
まず、スクールで、先生方はどのように対応をしていらっしゃるのか、伺っていいですか?
子どもを信じて聞いてみるのは、とてもいいアイディア
C)
我慢を経験するという面では、スクールという集団生活のなかではたくさん、我慢を練習することができています。スクールには時間割があって、今何をするのかということに沿ってグループで動く必要がありますし、一人ひとりの「気分がのらない」「今違うことをしたい」に合せていたら、1日何もできずに終わってしまいますので、そこは我慢をしてもらうということにならざるを得ない。
もちろん、子どもは反抗したりしますし、大人みたいに合せてくれないですし、大変な場面は多々あるのですが、それでも皆が我慢の修行中みたいなところもあるので、皆で修行をしていこうといことで、少しずつ良くなっていく、対応できている部分はあります。なので、おそらく思い通りにならないと大人に反抗する場面というのは、ご家庭での方が多いように思います。
実際にKEAでは、嫌だ、やらない、自分はこうしたいんだと先生に反抗するような場面は2歳児のジュニアクラスの子どもたちはあるにせよ、デイリークラスの子どもになると、あまり見えなくなってきます。
また、子どもが例えば時間割通りに動きたくないと主張する場面では、先生は「ダメ」という対応ではなく、「今は何をする時間かな?」「先生は何て言ってたかな?」っていう風に声掛けをしています。そうすると、子どもは自分で考えて、行動できているようです。
E)
子どもってわかっているんですよね。わかっているけど、わがままを言いたい、、、これが家庭の中でよくあらわれる光景かもしれません。
C)
それ、とてもわかります。お家の方がお迎えに来た瞬間に、突然スイッチが変わって、「ママやって〜」となる場面もよく見ますので。
E)
ですよね、そして今伺った「今は何をする時間かな?」等は、家庭でも使えるヒントとなりますね。「クイズです!お母さんは何て言ってたかな?」みたいにクイズ形式にすると、子どもは楽しいことが好きなので乗ってくるかもしれません。
3歳にもなると、自分と相手の気持ちの違いを理解できるようになりますので、「お母さんはこうして欲しいんだ」と伝えるのもいいと思います。その先には、子どもと親、両者の思いを大切にしながら解決に向かう、そんなアイディアも出てきたりします。子どもを信じて聞いてみるのは、とてもいいアイディアですね。
C)
KEAのジュニアクラスの1年では、言葉でコミュニケーションがとれるように練習をしていくので、3.4歳くらいになると、今から何をするのか、どうしてこれをするのか、ということを言葉で説明することで理解、行動が出来るようになっている気がします。
「今、心が成長しているんだ」と深呼吸していただきたい。
E)
素晴らしいことですね。では、次に「子どものご機嫌を取りすぎることの弊害」について触れたいと思います。まず一つ目は、
ということ。
幼少期には心の基盤ができていきます。全て自分の思い通りになると、やはり心の成長が止まってしまう。子どもが癇癪など起こすと、親もキーッとなってしまいますが、そういう時こそ、
「今、心が成長しているんだ」と深呼吸していただきたい。
C)
心の成長ポイントってことですね。
E)
はい、「思うようにならない場面」こそ、子どもはぐんと成長すると感じます。なので、思うようにならない場面に遭遇したら、「今こそ成長ポイント」と思って、ぐっとこらえてほしいんです。
また、他の弊害としては、「欲しいものがなくなる」です。欲しいものがない、この状態は周囲への関心を薄れさせ、好奇心さえ減退させてしまいかねません。よく、子育てにおいては、魚を与えるのではなく、魚の撮り方を教える、と言いますが、今の子どもたちは、実は魚がもう食べたくないとか。お腹いっぱいなんですよ。そんな状態をすこしでも回避するためにも、やはり満たしすぎてしまうことは避けた方がいいと思います。
そしてもう一つは人間関係。幼児期には、人と関わる力がぐんと育ちます。そして、人間関係は、実際に体験しながら育っていくものなんです。なんでも自分の思う通りになっていたら、人と人とのぶつかりあいもない。子どもは「人との関わり方」を学べなくなってしまいます。これは重大な問題です。さらに、スクールではダメって言われるけど、家では誰もダメと言わない。たとえば、こういうことが理由で、スクールにいくことへの躊躇が始まってしまうと、それは二次的な問題となってしまいます。
誰しも、家ではニコニコとお子さんと楽しい時間を過ごしたいと思うのですが、長期的に子どもの育ちを捉え、思うようにならない場面も是非大切にしていただければと思います。
C)
親は一生ずっとお子様の横について歩き、つまずきそうな小石を拾ってあげることは出来ません。これから、子ども達にはいろんな場面で、自分で考え、判断をして良い選択をしていける力が必要です。そのトライアンドエラーをスモールステップでしていけるのも、今がベストタイミングということなのでしょうね。
E)
そうですね。今という幼少期なら、体も小さいですし、欲しいものも、なんとか買ってあげることができるものですが、小学校中学年にもなると、欲しいものも変化しますし、やりたいことも変化してきます。子育ては長期の営みですし、今から子どもを王様にしないことを意識したいですね。
C)
私はよく、子育てを木や植物の育ちに例えることがあるのですが、植物は日があたらないと小さいままだったり、大きく育って欲しいと栄養やお水を与えすぎると、根が腐ってしまったり。大切なのは加減です。「これでいいのかな?」と今の適正を見極めるのがなかなか難しいものですが、是非スクールにも相談をしていただきつつ、適切な加減を見つけていただけたらと思います。
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記事執筆
江藤真規
https://saita-coordination.com/