コラム記事 #57
「集団生活」だからできることとは?
神戸イングリッシュアカデミー(KEA)では、皆さんの子育てが少しでも豊かになるように、少しでもラクになるように、子育ての「ちょっと困った」ことについて、共に考えていく場作りをしています。
保護者様から実際にいただいた質問に、対処のコツや子どもの見方のコツを解説して参ります。毎日の子育てに是非お役立てください!
Ms.Fukui Asa 以下(A)KEA ジュニア・プリキンダーマネージャー
Ms.Eto 以下(E) 神戸イングリッシュアカデミー(KEA)プログラムコーディネーター
幼児にとっての集団生活の価値
A)
今日のテーマは、「幼児にとっての集団生活の価値」です。
E)
はい、よろしくお願いいたします!
集団生活の中での子どもの育ち…いいテーマですね。少子化の影響もあり、コロナの影響もあり、子ども同士が触れ合う機会が減少しています。ベネッセの「幼児の生活アンケート」調査によれば、子どもが親と遊ぶ時間が増えているとか。子ども同士が触れ合う時間が減っていることの、一つの表れかもしれません。
確かに、公園等にいっても、子どもが遊んでいる姿は、あまり見なくなりましたよね。友達の家に遊びに行く機会も、減少傾向に…。
どうですか、神戸の公園等では、子ども達が群れて遊んでいる光景とか見えますか?
A)
見えないですね。
E)
そうなんですね…。しかし、本来子ども達は群れて遊ぶもの。子ども同士が共に過ごし、ぶつかりあって、その中から学んでいくことがたくさんあるわけです。
今日はそんな「集団」から子どもが学ぶ価値について、2点お伝えしていきたいと思います。
人と関わる力が育つ
E)
まずは、1点目ですが、「人と関わる力が育つ」ということ。
「人間関係」は5領域の1つでもあり、幼児期に「人と関わる経験」をすることは、とても大事なことなのです。
たとえば、KEAで子ども同士がモノの取り合いになることもあるかと思いますが、そういった時、アサ先生はどう子どもたちに対応しますか?
A)
そうですね、「モノの取り合い」の中にもたくさんのストーリーが詰まっているんですね。例えば、モノを取られた子、取った子がいるとしたら、そこに至るまでの、その前後でたくさんのストーリーがあるはずなんです。もしかすると、取った子が最初に使っていたモノだったかもしれないですし、相手の子が使っていたのを知らなかったってこともあったりします。なので、その場面だけを見るのではなく、二人の気持ちを「どうしたの?」って聞いていきます。双方の意見を聞いて気持ちを受け止めることは、大切にしています。
E)
そうやって、子どもの気持ちを理解すること、とても大事ですね。
集団の中にいれば、「あれ?自分の思い通りにならない」という経験もあって、その時に子どもは、「目の前にいるお友達は、“自分とは違う気持ち”なんだ」っていうことを知っていく。直接やりとりできなくても、先生に聞いてもらったりして、その中でどうしたらうまくやっていけるかを考えていきます。「それまでのストーリー」というお話がありましたが、どういう背景があって、この子はこんな気持になっているのか、などもわかるようになっていって、これがものすごく大きな育ちなんですよね。まさに、経験してこそ得ることができる心の成長です。
家にいれば、玩具は使いたい放題ですし、自分とは異なる気持ちにふれる経験もあまりありませんしね。
また、集団にいると、「どうしたらみんなで楽しく遊ぶことができるか 」などを、考えるようになったりもします。例えば玩具が1つしかない中、皆でどうしたら楽しく遊べるか…など。そうすると、すごく面白いアイディアが出てきたりして、子どもの力には驚かされることも多々ありますね。
子ども同士が共に過ごす時間だからこその成長です。
子どもの気持ちが上がる、心が動く
E)
では、2点目にいきましょう。
2点目ですが、「子どもの気持ちが上がる、心が動く」っていうことなんです。切磋琢磨という言葉がありますが、子どもって、「頑張ろうね」って言われて頑張るわけではなく、「悔しい」とか、「あの子がやっているから、自分もやれるようになりたい」とか、そんな気持ちが出てきてこそ、頑張り出したりするんです。
大人が言葉で「動かす」のではなく、他児を見たり、真似してやってみたり…そんな経験をするなか、自ら動き出すんですよね。仲間が頑張っていることだとか、上手にかっこよくできている姿を見ると、「自分も!」とチャレンジする気持ちが芽生えてくる。
まさに、これが集団で過ごすことの価値ということになります。
E)
KEAでは、異学年の子どもを見る機会も多いと思いますが、お兄ちゃんとかお姉ちゃんがやっている姿を見て、「かっこいいな〜、あんな風になりたいな〜」と思って練習を重ねる。これは、親から「頑張って」と言われたり、褒められたり、ご褒美もらったりした時に出てくる気持ちとは異なるもの。こういうことができるのが集団…ということかなと。
アサ先生は、今2歳クラス(ジュニアクラス)の担任をされていますが、ジュニアさんの年齢でも、集団の中での心の動きって見られますか?
A)
そうですね。2歳でも、やはり私たちでは教えられないようなことを、他児からの刺激をもらって頑張ったりしています。例えば、苦手な食べ物があった時に、私たちがいくら励ましても なかなか食べなかった子が、上の学年の子どもに見られていると、パクっと食べたりすることもあって…。そんな風に、気持ちが動くきっかけがたくさんあるのが集団生活なのだと思います。
スイッチを押すきっかけがたくさんある、それが集団生活の刺激なんですね。
E)
ほんとですね。当然集団の中に子どもを入れるとなると、「嫌だ」とか「行きたくない」とかの場面も出て来て、困ってしまうこともあるかと思います。しかし、集団だからこそ育まれる力もあることを理解して、「行っておいで!」と背中をそっと押してあげられるような、そんな関わりができるといいですね。一度集団に入ってしまえば、子どもはきっと、自分で何とかやっていくことができるのだと思います。
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記事執筆
江藤真規
https://saita-coordination.com/